日本では、親知らずや顎関節症の症状を最初に訴える相手は、たいてい地域のかかりつけ歯科です。ところが、歯が歯肉や骨の中に埋まった埋伏智歯や、噛み合わせ全体に関わる顎関節症は、一般歯科の診療範囲を超えることがあります。歯科用CTで骨や神経の位置を正確に把握しながら抜歯を行うには、口腔外科の専門的な知識と経験が必要です。
とくに下顎の親知らずは、下唇へつながる下歯槽神経のすぐそばを通ります。経験の浅い医師が扱うと術後に唇のしびれが残るリスクがあるため、慎重な対応が求められます。実際、智歯周囲炎を繰り返す患者さんの多くが、かかりつけ歯科から口腔外科の専門外来へ紹介されるケースも珍しくありません。
こうした場面で頼りになるのが、次の三つの確認ポイントです。
- 日本口腔外科学会の専門医・認定医が在籍しているか
- 歯科用CTやナビゲーションシステムなどの設備が整っているか
- 顎関節症や難症例の対応実績があるか
この三つを押さえるだけで、医院選びの精度は大きく変わります。
治療内容ごとの選び方と費用の目安
口腔外科と聞いてまず思い浮かぶのが、親知らずの抜歯でしょう。健康保険が適用されるケースがほとんどで、初診料を含めても数千円から1万円前後がおおよその目安です。症状や歯の状態によっては、大学病院で全身麻酔下の手術が必要になることもあります。
一方、顎関節症はマウスピースを使った保存療法が中心です。保険が適用されるため、通院を重ねても数千円台に収まることが多く、まずは専門医による正確な診断が欠かせません。口が開きにくい、顎を動かすと音がするといった違和感を放置すると、噛み合わせ全体のバランスが崩れ、頭痛や肩こりまで引き起こすこともあります。
| 治療内容 | 保険適用 | 費用の目安 | こんな人に | メリット | デメリット・注意点 |
|---|
| 親知らず(埋伏智歯)の抜歯 | あり | 初診料を含め数千円〜1万円前後 | 腫れや痛みを繰り返す人 | 原因を根本から解決できる | 術後の腫れ・痛み、まれにしびれ |
| 顎関節症のマウスピース治療 | あり | 通院回数により数千円台 | 口が開きにくい・音が気になる人 | 体への負担が少ない | 効果に個人差があり長期間の通院が必要 |
| 顎変形症の外科手術 | あり | 矯正と手術をあわせると長期戦 | 噛み合わせと顔の形の悩みがある人 | 機能と見た目の両方を改善 | 入院が必要、術前矯正が1〜2年 |
| インプラント治療 | なし(自費) | 本数や骨の状態で異なる | 失った歯の機能回復を望む人 | 自分の歯に近い噛み心地 | 高額で継続的なメンテナンスが必須 |
| 費用は医院や症状によって変わります。初診の際に、治療計画とあわせて見積もりを聞いておくと安心です。 | | | | | |
| 東京都内に住む32歳の佐藤さんは、右下の親知らずが原因の智歯周囲炎を2年ほど繰り返していました。かかりつけ歯科での抗生物質や洗浄ではなかなか落ち着かず、日本口腔外科学会の認定医が在籍する近くの口腔外科専門外来を紹介されました。初診で歯科用CTを撮影し、下歯槽神経との距離を確認してから抜歯。術後の腫れは数日で引き、それ以来、腫れや痛みに悩まされることはなくなったそうです。 | | | | | |
| 地方で暮らす人にとっては、大学病院や県立病院の歯科口腔外科が頼りになります。歯科大学の附属病院は顎変形症の手術から、骨粗鬆症などの治療薬を服用している方の抜歯まで幅広く対応しています。県内の総合病院に歯科口腔外科が設置されている地域も増えており、「口腔外科 〇〇県」のように地域名を入れて検索するのがおすすめです。 | | | | | |
初診から抜歯まで、当日までにできること
まずはかかりつけ歯科で相談し、必要なら紹介状をもらってください。大学病院や総合病院の口腔外科は予約制のところが多いため、紹介状があるとスムーズに進みます。初診では精密検査を受け、神経の位置や炎症の範囲を確認してもらいます。そのうえで、抜歯の方法や麻酔、術後の経過、費用について納得がいくまで説明を受けるのが基本です。
抜歯当日に備えて、冷やすための保冷材とやわらかい食事を準備しておくと、術後の過ごし方が楽になります。処置後は血行を促す飲酒や激しい運動を数日控えましょう。腫れや痛みが気になるときは、我慢せずに担当医へ連絡してください。
日本口腔外科学会のウェブサイトでは、専門医・認定医が在籍する施設の情報を確認できます。自宅や職場から通いやすい場所で、土日診療や駐車場の有無もあわせてチェックすると、通院の負担がぐっと軽くなります。
親知らずや顎の不調は、早めに向き合うほど治療の選択肢が広がります。少しでも気になる症状があれば、まずはかかりつけ歯科で相談してみてください。専門医と設備がそろった口腔外科なら、安心して治療に臨めるはずです。