一般の歯科医院は虫歯治療や歯周病ケア、クリーニングなど日常的な診療が中心です。一方で口腔外科は、歯や歯ぐきだけでなく顎の骨、唾液腺、口の粘膜、さらには神経までを含む口周りの外科的な病気やけがを扱います。日本では多くの歯科大学や大学病院に専門部門があり、近年は口腔外科を専門に掲げるクリニックも増えています。
ここで受診が必要になる代表的な症状を挙げると、次のようなものがあります。
- 骨の中に完全に埋まった親知らずの抜歯
- 顎関節症による開口障害や痛み
- 歯根嚢胞や含歯性嚢胞などの摘出手術
- なかなか治らない口内炎や粘膜の異常
- 歯が原因で起こる上顎洞炎や歯性感染症
特に親知らずは要注意です。真っすぐ生えていれば簡単な抜歯で済みますが、横向きに埋まっている場合や骨の奥に埋伏している場合は、歯茎を切開し骨を削る外科処置が必要になります。一般歯科では対応が難しく、大学病院や口腔外科専門のクリニックへ紹介されるケースが少なくありません。
ある40代の会社員は、繰り返す親知らず周囲の炎症に数年間悩まされていました。痛み止めでやり過ごす日々を続けていましたが、腫れが顔半分に広がったことをきっかけに口腔外科を受診。下顎水平埋伏智歯の診断を受け、入院はせず日帰りの手術で抜歯しました。「もっと早く専門外来に来ればよかった」というのが彼の率直な感想でした。
費用の目安は症状の難しさで変わる
口腔外科の治療費は、健康保険が適用されるかどうか、そして処置の難易度によって大きく変わります。保険診療では全国共通の診療報酬が適用されるため、基本的な処置費は地域による差がほとんどありません。
| 治療内容 | 保険3割負担の目安 | 治療時間の目安 | 主な対象 | 特徴と注意点 |
|---|
| 普通抜歯(親知らずが真っすぐ生えている) | 1本あたり総額2,000〜3,000円程度 | 10〜20分 | 症状があり保険適用となる方 | 負担が軽く、術後の腫れも少なめ |
| 難抜歯(横向き・骨内埋伏) | 1本あたり約3,500〜5,500円 | 30〜60分 | 智歯周囲炎を繰り返す方 | 切開や骨削除を伴い、腫れや痛みが出やすい |
| 静脈内鎮静法を併用した抜歯 | 自由診療で2万〜5万円程度 | 半日程度 | 歯科恐怖症が強い方 | 点滴でウトウトした状態で治療が受けられる |
| インプラント治療 | 自由診療で1本あたり約35万〜45万円 | 数回に分けて通院 | 失った歯を補いたい方 | メーカーや施設、骨造成の有無で変動が大きい |
| 実際にはこれに初診料、レントゲン撮影料、麻酔料が加わります。抜歯後に処方される抗生物質や痛み止めは院外薬局で別途支払うのが一般的で、薬代は500〜1,500円程度を見ておくとよいでしょう。保険が適用されない自費診療の場合は、抜歯だけで2万〜3万円程度の負担になります。 | | | | |
受診の流れと地域の医療資源を活かす方法
口腔外科の受診を考えたとき、最初の窓口はかかりつけの歯科医院で十分です。実際の流れは次のようになります。
まず現在の症状を詳しく伝え、レントゲンやCTで状態を確認してもらいます。難症例と判断された場合は、専門医への紹介状を書いてもらうのがスムーズです。日本口腔外科学会が認定する専門医・認定医が在籍する施設であれば、比較的高度な処置にも対応できます。
地方在住の方であれば、都道府県の歯科医師会や大学病院の口腔外科が有力な選択肢になります。たとえば都内であれば新宿や池袋など駅近くに口腔外科外来を備えたクリニックが点在しており、仕事帰りに通える利便性も選ぶポイントです。一方で全身疾患がある方や、入院が必要になる可能性がある方は、医科と連携できる大学病院を選ぶのが安心です。
治療後は、抜歯した穴の管理が重要です。術後数日はうがいを強くしすぎない、硬いものを避ける、喫煙を控えるといった指示を守ることで、ドライソケットなどの合併症を防げます。経過観察も含めて通える距離の施設を選ぶことが、結果的に満足度を高めます。
迷ったときは早めに専門外来へ
口腔外科というと「大きな手術」をイメージしがちですが、実際には日帰りで済む処置がほとんどです。痛みや腫れを我慢して放置すると、感染が顎や首まで広がることもあります。少しでも気になる症状があれば、まずは近くの歯科医院で相談してみてください。必要に応じて適切な専門外来を紹介してくれるはずです。
費用負担が気になる方は、年間の医療費が一定額を超えた場合に所得税の一部が戻る医療費控除制度も覚えておくと役立ちます。抜歯費用や通院にかかった交通費などが対象になることがあります。まずは自分の症状に合った診療科を見極め、無理のない計画で治療を始めることが、口の健康を長く保つ第一歩になります。