頭痛は大きく分けると、病気のサインとして現れる「二次性頭痛」と、原因となる病気が見つからない「一次性頭痛」に分類される。一次性頭痛の代表格が緊張型頭痛と片頭痛だ。この2つは対処法がまったく異なるため、まず自分のタイプを見極めることが重要になる。
緊張型頭痛は頭の両側がギューッと圧迫されるような鈍い痛みで、拍動感はほとんどない。長時間のデスクワーク、ストレートネック、眼精疲労などが引き金になりやすく、痛みは軽度から中等度。吐き気は基本的に伴わない。一方、片頭痛は片側(または両側)が脈打つように痛み、光や音に敏感になり、吐き気を伴うことも多い。発作は数時間から数日続き、日常生活が大きく制限される。
この違いを見落とすと、市販薬の選び方や受診のタイミングを誤りかねない。たとえば片頭痛に効く薬と緊張型頭痛に効く薬は異なり、間違った使い方を続けると薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)を招く危険もある。月に10日以上鎮痛薬を飲んでいる人は、頭痛専門医の診察を検討すべきだ。
| 項目 | 緊張型頭痛 | 片頭痛 |
|---|
| 痛みの性質 | 締め付けられるような鈍い痛み | 脈打つような拍動痛 |
| 左右 | 両側が多い | 片側が多い(両側の場合も) |
| 随伴症状 | 吐き気はほぼなし | 吐き気・光過敏・音過敏を伴う |
| 主な誘因 | 肩こり、ストレス、眼精疲労 | 睡眠不足、月経、気圧変化、特定の食べ物 |
| 市販薬の目安 | 鎮痛薬(アセトアミノフェン、イブプロフェンなど) | 軽度なら鎮痛薬、強い発作は医療機関でトリプタン処方 |
| 受診の目安 | 週2回以上痛みがある、薬を頻繁に飲む | 月1回以上発作がある、日常生活に支障が出る |
片頭痛治療の今:トリプタンからCGRP予防薬へ
片頭痛の治療はここ数年で大きく変わった。急性期には発症から1時間以内のトリプタン服用が効果的とされる。トリプタンは拡張した血管を収縮させ、周囲の炎症を鎮める働きを持つ。日本では複数のブランドが処方されており、吐き気止めとの併用も有用だ。タイミングを逃すと効果が十分に得られないため、発作の初期サインを感じたら早めに服薬するのがポイントになる。
さらに注目されているのが、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を標的とした予防薬だ。CGRP阻害薬は発作そのものを減らす新しいタイプの治療薬で、従来の予防薬で効果が不十分だった人にも選択肢を広げている。国内市場でもこうした次世代治療への関心が高まっており、頭痛を「我慢するもの」ではなく「治療するもの」と捉える意識が広がりつつある。
一方、非薬物療法として、神経を電気刺激するニューロモデュレーションと呼ばれる治療法も登場している。皮膚の上から三叉神経などに刺激を与えて痛みの伝達を抑える仕組みで、自宅で自分自身で使えるデバイスも承認されている。薬を飲みたくない、副作用が心配という人にとって選択肢の一つになるだろう。
頭痛外来の探し方と受診のタイミング
「頭痛くらいで病院に行くのは気が引ける」という声はよく聞く。だが、経験したことのないような激しい痛み、吐き気を伴う突然の頭痛、ろれつが回らないなどの症状がある場合は、ためらわずに救急を含む医療機関の受診が必要だ。くも膜下出血や脳出血など命に関わる病気が潜んでいる可能性がある。
日常的な頭痛で受診を考えるなら、脳神経内科や脳神経外科の「頭痛外来」が頼りになる。都市部では頭痛外来を掲げるクリニックが増えており、横浜駅周辺や神戸市東灘区など、駅近くで通いやすい立地の施設も多い。予約制のWeb受付を導入しているクリニックなら、待ち時間を短縮できる。オンライン診療に対応している施設もあるので、仕事の合間に受診したい人には便利だ。
受診の際は、頭痛の頻度、痛みの場所、持続時間、誘因になりそうなものをメモしておくとスムーズに診察が進む。市販薬の服用歴も医師に正確に伝えたい。頭痛ダイアリー(頭痛記録)をつけている患者は、診断の精度が上がるといわれている。
自宅でできる頭痛対策、職場での工夫
専門医の治療と並行して、日常生活の見直しも効果的だ。肩や首の筋肉の緊張が続くと緊張型頭痛を誘発しやすい。1時間に1回は席を立ち、肩を回したり首を前後左右にゆっくり動かしたりするだけでも違う。ディスプレイの高さを目の位置に合わせ、スマートフォンを長時間うつむいて見る姿勢は避けたい。
片頭痛持ちの人にとっては、睡眠リズムの安定が何より大切だ。休日に寝だめするとかえって発作を誘発することがあるため、平日と休日の起床時間の差をなるべく小さくする。気圧の変化に敏感な人は、天気予報アプリで気圧の急変をチェックし、その日は無理な予定を入れないという工夫もある。
職場で頭痛に悩む人は、産業医や人事に相談するのも一つの方法だ。頭痛は集中力や判断力を低下させ、仕事の生産性に大きな影響を与える。近年は頭痛を理由に休職を選択する人もおり、企業側も健康経営の一環として従業員の頭痛対策に関心を寄せ始めている。市販薬に頼るだけではなく、症状が続くなら専門医の診察を受けて、適切な治療計画を立ててほしい。
まとめに代えて
頭痛は「我慢すれば治る」ものではない。慢性的な頭痛を抱えながら毎日を過ごしている人は、一度頭痛外来を受診してみてほしい。適切な診断と治療によって、発作の頻度を減らし、生活の質を取り戻すことは十分に可能だ。まずは自分の頭痛のタイプを知ることから始めよう。