頭痛と一口に言っても、その種類によって治療法はまったく異なる。最も多いのが片頭痛と緊張型頭痛の二つで、まずは自分がどちらのタイプかを見極めることが大切だ。
片頭痛は、頭の片側がズキズキと脈打つように痛み、吐き気を伴ったり、光や音、においに敏感になったりするのが特徴。発作が4時間から72時間続くこともあり、その間は仕事も家事も手につかない。痛みの直前に、視野がチカチカする「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる前兆が現れる人もいる。女性ホルモンの変動と関係が深く、月経周期に合わせて発作が起きやすいのも片頭痛の特徴だ。
一方の緊張型頭痛は、頭全体がギューッと締め付けられるような重い痛みが続くタイプ。肩や首のこりを伴うことが多く、40代以降の中高年女性に多いとされる。痛みは片頭痛ほど強くないものの、慢性的に続くことで仕事の集中力を削ぎ、気づかないうちに生活の質を下げているケースも少なくない。
危険なサインも頭に入れておきたい。「今まで経験したことのないような突然の激痛」「麻痺やしびれ、言葉のもつれを伴う頭痛」「発熱と首のこりが同時にある」といった症状があれば、くも膜下出血や髄膜炎などの緊急性の高い病気の可能性がある。その場合は迷わず救急医療機関を受診してほしい。
市販薬で我慢していませんか?治療薬の選び方と注意点
頭痛の治療は、症状の強さに応じて薬を使い分けるのが基本となる。軽度から中等度の痛みにはアセトアミノフェンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が第一選択だが、片頭痛と診断された人でこうした薬の効果が不十分な場合は、トリプタン製剤が推奨される。トリプタン製剤は片頭痛の痛みの仕組みそのものに作用する専用薬で、発作の初期に服用することで症状を効果的に抑えられる。
ただし、ここで注意したいのが市販薬の使い過ぎだ。鎮痛薬を週に2〜3日以上、頻繁に使っていると、「薬物の使用過多による頭痛(MOH)」を引き起こすことがある。薬が効いているはずなのに、かえって頭痛の頻度が増えていくという悪循環に陥るパターンだ。市販薬を飲む頻度が増えてきたら、それは専門医を受診するタイミングのサインでもある。
片頭痛の発作が月に2回以上ある、あるいは生活に支障を来す頭痛が月に3日以上ある場合は、予防療法の導入も検討される。予防薬は発作そのものを減らすための薬で、近年はCGRP関連薬剤という新しい選択肢が登場し、治療の幅が広がっている。2025年には、急性期治療と発症抑制の両方に使える経口CGRP受容体拮抗薬「ナルティークOD錠」も国内で発売され、血管収縮作用がないため心筋梗塞や脳梗塞の既往がある人でも使いやすい薬として注目されている。
治療薬の種類と特徴
| 薬の分類 | 代表的なタイプ | 主な使い方 | 向いている人 | メリット | 注意点 |
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| 一般的な鎮痛薬 | アセトアミノフェン、NSAIDs | 発作時の急性期治療 | 軽度〜中等度の頭痛 | 入手しやすく副作用が比較的少ない | 使い過ぎるとMOHのリスク |
| トリプタン製剤 | スマトリプタンなど | 発作時の急性期治療 | 片頭痛で鎮痛薬が効かない人 | 片頭痛に特化した効果 | 血管収縮作用があるため既往歴に注意 |
| CGRP関連薬剤 | 経口薬・注射薬 | 急性期治療・予防療法 | 慢性片頭痛、他の薬が使えない人 | 血管収縮作用がなく予防にも使える | 専門医による処方が必要な場合が多い |
| 漢方薬 | 呉茱萸湯、葛根湯、釣藤散など | 症状に合わせた対症治療 | 西洋薬が合わない人 | 比較的安全に使える | 体質に合う合わないがある |
| 漢方薬も選択肢の一つだ。呉茱萸湯や五苓散は片頭痛に、葛根湯や釣藤散は緊張型頭痛に使われることがあり、西洋薬との併用も可能な場合がある。ただし、自己判断での併用は避け、医師や薬剤師に相談しながら使うのが望ましい。 | | | | | |
頭痛外来ってどんなところ?受診の流れと専門医の探し方
「頭痛外来」とは、緊急性の高い二次性頭痛を見極めつつ、慢性頭痛の診断と治療を専門的に行う外来のこと。日本頭痛学会が認定した頭痛専門医が診察を担当することが多く、より正確な診断と治療が期待できる。全国の脳神経内科や脳神経外科を中心に設置が進んでおり、自治体によっては近隣の医療機関をネットで検索することもできる。
受診の流れはこうだ。まず問診で頭痛の頻度、痛みの性質、随伴症状などを詳しく聞かれ、必要に応じて頭痛ダイアリーの記録を求められる。頭痛ダイアリーとは日々の頭痛を記録するツールで、診断の精度を高め、治療効果の評価にも役立つ。受診の前に2週間ほど記録をつけてから行くと、医師とのコミュニケーションがスムーズになる。
診断がつけば、症状に合わせて急性期治療薬や予防薬が処方される。片頭痛の予防療法が必要なケースでは、抗てんかん薬や抗うつ薬、β遮断薬などが使われるほか、近年はCGRP関連の新薬が選択肢に加わっている。CGRP関連薬剤は日本神経学会や日本頭痛学会の専門医でなければ使用できない場合があるため、受診先を選ぶ際は専門医が在籍しているかを確認するとよい。
医療費については、保険診療で受診できるのが一般的だ。頭痛外来の初診料や検査費用は他の診療科と大きな差はなく、薬剤費も保険適用となる。トリプタン製剤やCGRP関連薬剤は薬価が高いものの、多くの場合で保険診療の範囲内で処方されるため、経済的な負担を理由に受診をためらう必要はあまりない。
職場や日常でできる頭痛対策:予防の視点を持つ
薬による治療に加えて、日常生活の見直しも頭痛対策には欠かせない。片頭痛は、睡眠不足や寝過ぎ、空腹、ストレス、気圧の変化、特定の食べ物などがきっかけで発作が起きることが知られている。自分の発作の誘因を把握するためにも、頭痛ダイアリーは役に立つ。
緊張型頭痛には、デスクワーク中の姿勢の見直しが効果的だ。パソコン作業が続くときは、1時間に一度は立ち上がって肩を回したり、首のストレッチを挟んだりする。また、スマートフォンを長時間見続けると前かがみの姿勢になりがちなので、画面を目線の高さに近づけるだけでも負担は変わる。
職場での理解も得ておきたい。頭痛発作が起きたとき、暗い部屋で休める場所があるか、勤務中の対応をどうするかを事前に上司や同僚と話し合っておくと、いざというときに焦らない。実際、片頭痛を持つ人の多くが「発作への不安から予定を立てにくい」という社会的な負担を抱えている。職場の理解は、治療と同じくらい大きな支えになる。
非薬物療法も選択肢の一つだ。リラクセーション法や認知行動療法、理学療法、鍼灸、神経ブロックなどは、緊張型頭痛の予防や慢性化の予防に有用とされる。最近では、皮膚の上から神経を刺激する非侵襲的なニューロモデュレーション機器も登場しており、国際頭痛学会のガイドラインでも推奨レベルが示されている。日本では承認済みの機器と未承認の機器があるため、利用を考える場合は頭痛専門医に相談してほしい。
頭痛と上手に付き合うために、まずは一歩踏み出す
頭痛は多くの人が経験する身近な症状だからこそ、「我慢するのが当たり前」と放置されてしまいがちだ。しかし、適切な診断と治療を受ければ、発作の頻度や強さは確実に改善できる。市販薬を飲む頻度が増えてきた、頭痛のために仕事や家事に支障が出ている、そんな人は一度、頭痛外来や脳神経内科を受診してみてほしい。
日本頭痛学会のホームページでは、頭痛専門医の検索ができる。まずは自分の頭痛がどんなタイプなのかを知ることから始めよう。頭痛の記録をつけながら、専門医の診察を受ける。その一歩が、頭痛に振り回されない毎日への近道になるはずだ。