日本頭痛学会の資料によると、片頭痛の有病率は男性で3.6%、女性ではその約3倍の12.9%と報告されています。にもかかわらず、医療機関への受診率は低いことが指摘されています。「仕事を休めない」「市販薬で何とかしている」という状態が続くと、頭痛そのものだけでなく、予定を立てられない不安や集中力の低下といった社会的な負担も積み重なります。
頭痛は大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分けられます。一次性頭痛は検査で原因となる病気が見つからないタイプで、代表的なものに片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛があります。二次性頭痛は脳出血や脳腫瘍、副鼻腔炎などが原因で起こるものです。突然の激しい痛みや意識障害を伴う場合は緊急受診が必要なので、まずそこを見極めることが大切です。
自分の頭痛タイプを見分ける3つのチェックポイント
片頭痛のサイン
ズキズキと脈打つような痛みが4〜72時間続き、吐き気や光・音・においへの過敏を伴うのが特徴です。体を動かすと痛みが強まる傾向があります。痛みの直前に視覚異常などの前兆(オーラ)を伴う人もいます。
緊張型頭痛のサイン
頭全体を締め付けられるような鈍い痛みで、肩や首のこりを伴うことが多いタイプです。天気や気圧、寝不足、ストレスで悪化しやすいのも特徴です。
群発頭痛のサイン
目の奥をえぐるような激しい痛みが、一定期間に集中して起こります。同じ側の結膜充血や流涙、鼻づまりを伴い、痛みのために落ち着かず動き回る傾向があります。
この3つは混同されがちですが、治療法がまったく異なります。市販薬でごまかす前に、自分の頭痛がどのタイプかを把握することが第一歩です。
市販薬との付き合い方:自己流の服用が招く落とし穴
ドラッグストアにはロキソニンS、イブ(EVE)、バファリンなど多くの鎮痛薬が並んでいます。ロキソニンSはロキソプロフェン60mg配合で、効き目が強く速いのが特徴です。EVEは頭痛のCMでおなじみで、バファリンAは胃にやさしい配合が特長です。どの薬にも共通して、空腹時を避ける、水かぬるま湯で飲む、15歳未満の子どもには使わないという注意点があります。
ただし、ここで重要なのは「どの薬を選ぶか」より「週に何回飲んでいるか」です。頭痛薬を月に10日以上、あるいは週に2〜3回以上の頻度で使っていると、薬の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)を引き起こすことがあります。薬が効かなくなり、さらに薬を飲むという悪循環に陥るケースは少なくありません。頭痛診療ガイドラインでも、この状態を早期に専門医へ相談することが推奨されています。
専門外来で受けられる治療:急性期から予防まで
頭痛外来では、問診と診察に加えて、必要に応じて頭部CTやMRI検査を行い、診断に基づいて治療方針を立てます。急性期治療では、片頭痛発作に対してトリプタン系薬剤や、2025年12月に日本で発売されたCGRP受容体拮抗薬「ナルティークOD錠75mg」などが選択肢に加わりました。ナルティークは、日本で初めて急性期治療と発症抑制の両方に使える経口薬として注目されています。
予防療法としては、発作の頻度が高い場合に、降圧薬や抗てんかん薬のほか、CGRP関連の注射製剤(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ)が用いられます。アジョビは4週間に1回または12週間に1回の投与が選べるため、通院頻度を抑えたい人に向いています。群発頭痛では、スマトリプタンの皮下注射や酸素吸入が用いられることもあります。
治療法の比較:自分に合った選択肢を知る
| カテゴリー | 代表的な選択肢 | 特徴 | こんな人に向く | 注意点 |
|---|
| 市販の鎮痛薬 | ロキソニンS、EVE、バファリン | ドラッグストアで手軽に入手できる | 痛みが月に数回で、軽度から中等度の人 | 月10日以上の服用は薬物乱用頭痛のリスク |
| 急性期の処方薬 | トリプタン系薬剤、ナルティークOD錠 | 片頭痛発作に特化して効果が高い | 市販薬で効果が不十分な人 | 医師の処方と服薬タイミングの指導が必要 |
| 予防の注射製剤 | エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ | 月に数回以上の発作を減らす | 発作が頻繁で生活に支障が出ている人 | 医療機関での投与が必要、適応の判断は専門医に |
| 非薬物療法 | 神経調節デバイス(レリビオン等) | 自宅で使用できる物理的な刺激で痛みを和らげる | 薬を使いたくない人、薬が合わない人 | 国内で使用できる機種は限られる |
頭痛ダイアリーで「攻略」する:自分に合う対策の見つけ方
日本頭痛学会は「頭痛ダイアリー」の活用をすすめています。頭痛の起きた日時、痛みの性質(脈打つようか、締め付けられるようか)、持続時間、吐き気や光・音への過敏の有無、服用した薬とその効果を記録していくものです。月経期間や気づいた出来事もメモしておくと、自分の頭痛がどんな場面で起きやすいのかが見えてきます。
この記録は受診時の医師にもそのまま伝わるので、診断の精度が上がります。予兆期のサイン(眠気、あくび、甘いものへの欲求など)を自分で感じ取れるようになれば、薬の服用タイミングを早められて、治療効果も高まるとされています。
受診を考えるタイミングと地域の頼れる窓口
次のような場合は、我慢せず頭痛外来や脳神経内科への受診を検討してください。
- 初めて経験する強い頭痛で不安がある
- 朝起きた時から痛い、首こり・肩こりとセットでつらい
- 生理前後に悪化する
- 市販薬を週に2回以上使っている
- 仕事の集中力が落ち、生産性が下がっている
東京では赤坂おかだ頭痛クリニックのように、オンライン診療や夜間診療を取り入れて働く人でも通いやすくした専門クリニックが増えています。横浜では横浜フロント脳神経外科・泌尿器科が頭痛外来を開設し、多言語対応も行っています。大阪や名古屋など主要都市にも脳神経外科・脳神経内科の専門外来があるので、まずは自宅から通える範囲で探してみるとよいでしょう。
頭痛は「仕方ない」と我慢するものではなく、適切な治療でコントロールできる状態です。痛みを抑えるだけでなく、頭痛を忘れて仕事や家事に集中できる日を増やすことが治療の目標になります。まずは一週間、頭痛ダイアリーをつけてみてください。その記録が、あなたに合った治療への近道になります。専門医と一緒に、自分だけの対策を見つけていきましょう。