一般の歯科医院が虫歯や歯周病を中心に診るのに対し、口腔外科は「口の中やあごの外科的な病気」を専門に扱います。具体的には次のような症状が対象です。
- 親知らず(埋伏智歯)の抜歯:まっすぐ生えず歯肉や骨の中に埋まっているケース
- 顎関節症:口を開けると音がする、痛む、開口が難しい
- 顎変形症:受け口や出っ歯が強く、噛み合わせと顔の骨の位置にずれがある
- 口腔がん・口腔粘膜疾患:2週間以上治らない口内炎やしこり、白板症など
- 顎骨の嚢胞・良性腫瘍:あごの骨の中にできる袋状の病変
- 顔面・顎の骨折:転倒や事故による外傷
- 有病者の歯科治療:高血圧や心臓病、糖尿病などの持病がある方の安全な抜歯
海外の歯科医院では口腔外科を「Oral Surgery」と称し、歯科医師が行う点は日本と似ています。ただし日本では、公的医療保険が多くの口腔外科処置に適用されるという特徴があります。親知らずの抜歯や顎変形症の手術は原則として保険診療で受けられるため、費用面の安心感が大きいのが魅力です。
親知らずの抜歯、費用と流れはどうなる?
日本で最も身近な口腔外科処置が親知らずの抜歯です。費用は歯の生え方によって変わります。複数の歯科医院の料金表を参考にすると、次のような目安になります。
| 症例 | 費用の目安(保険3割負担) | 治療時間 | 特徴 |
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| まっすぐ生えている親知らず | 約2,000円〜3,000円 | 10分程度 | 負担が軽く、通院も1回で済みやすい |
| 横向き・傾いて生えている | 約4,000円〜5,000円 | 30〜60分 | 歯茎を切開、骨を削る場合がある |
| 完全に骨の中に埋まっている | 約5,000円〜10,000円 | 30分以上 | 歯を分割する処置、術後の腫れに注意 |
| 保険未加入(自由診療) | 約20,000円〜30,000円 | 症例による | 海外転勤前などで保険が切れている場合 |
| これに加えて、レントゲン撮影が約1,200円、CT撮影が必要な場合は約3,500円〜4,000円程度が別途かかります。痛み止めや抗生物質の薬代も数千円程度です。大阪歯科大学病院のように、下あごの骨の中を走る神経(下歯槽神経)と親知らずの根が近い場合は、CTで精密に位置関係を調べてから抜歯するため、安心感が高まります。 | | | |
| 麻酔方法も選択肢が広がっています。局所麻酔が基本ですが、治療への強い不安がある方には**静脈内鎮静法(点滴麻酔)**が選ばれることが多く、ウトウトした状態で治療を受けられます。ただし鎮静法は保険適用外となることが一般的で、別途費用がかかります。重度の埋伏や複数本の一括抜歯では、全身麻酔による入院治療を選ぶ方もいます。 | | | |
顎関節症と顎変形症、どこでどう治す?
あごの痛みや口を開けづらさを感じている方は、まず顎関節症を疑うことが多いでしょう。日本の口腔外科では、食事指導や薬物療法、マウスピース(アプライアンス)療法、理学療法、さらには顎関節洗浄などの外科的治療まで段階的に提供されています。大阪歯科大学病院のようにMRIで関節の状態を診てから方針を決める医療機関もあり、まずは精密検査を受けることが大切です。
一方、受け口や著しい出っ歯で日常生活に支障がある場合は、顎変形症の可能性があります。この治療は、歯科矯正と顎の手術を組み合わせて進めるのが一般的です。日本では、顎変形症の治療は矯正と手術、入院を含めて保険適用となります。手術は全身麻酔で行い、口の中からあごの骨を移動させる方法が採られます。術前に1〜2年かけて歯並びを整え、術後もさらに微調整を続けるため、全体の治療期間は長めです。あごが小さいと睡眠時無呼吸症候群の原因になることも知られており、治療を検討する方は口腔外科と矯正歯科の連携が整った施設を選ぶと良いでしょう。
2週間治らない口内炎は要注意。口腔がんの早期発見
口腔外科では、口腔がんの診断と治療も重要な役割です。口内炎と似た症状でも、2週間以上改善しないもの、触って硬いしこりを伴うものは要注意とされています。日本では口腔がんの多くが舌がんであるといわれ、見える場所にできるため比較的早期に発見しやすいのが特徴です。とはいえ、進行すると潰瘍が深くなり、開口障害や飲み込みづらさを生じることもあります。
疑わしい場合は、視診・触診から始まり、造影CTやMRI、超音波、PET-CTなどの画像検査、そして確定診断のための病理組織検査へと進みます。口腔がんは進行が比較的早いとされ、疑った時点で速やかに専門機関を受診することが勧められます。歯科医院で紹介状をもらい、総合病院の口腔外科を受診する流れが一般的です。
医療費控除と費用負担を軽くする方法
口腔外科の治療費は、一定の条件で医療費控除の対象となります。1年間に支払った医療費の合計が10万円を超える場合(総所得金額が200万円未満の場合は所得の5%を超える場合)、確定申告で所得税や住民税の負担が軽くなる可能性があります。親知らずの抜歯費用、顎変形症の手術費、インプラントや義歯の治療費、通院のための公共交通機関の交通費も対象です。領収書を保管しておき、年末にまとめて確認する習慣をつけておくと良いでしょう。
また、口腔外科の一部の処置は、持病の治療薬との関係で注意が必要です。骨粗鬆症や関節リウマチの治療薬を服用中の方は、抜歯をきっかけに薬剤関連性顎骨壊死を生じるリスクがあります。日本では、こうした有病者に対して、医科の主治医と連携しながら入院下で安全に治療を行う体制が整っています。持病がある方は、口腔外科受診時に服用中の薬を必ず伝えてください。
地域の口腔外科専門医を探すには
日本では、日本口腔外科学会専門医という認定資格を持つ医師が、大学病院や総合病院、専門クリニックに在籍しています。探す際のポイントは次の通りです。
- かかりつけ歯科医院に相談:まず一般歯科で診てもらい、難症例なら紹介状をもらう
- 大学病院・総合病院の口腔外科を確認:顎変形症や口腔がんなど高度な治療はここが中心
- 専門医の資格表示を確認:ホームページの医師紹介で「日本口腔外科学会専門医」の記載を確認
- CT設備の有無を確認:埋伏智歯や顎関節症の精密検査には歯科用CTが有用
- 通いやすさと入院設備:全身麻酔が必要な場合、入院設備のある施設を選ぶ
地方にお住まいの場合は、県立病院や大学病院の口腔外科が充実していることが多いです。東京や大阪など都市部では専門クリニックの選択肢も広がり、土日診療や即日抜歯に対応する施設もあります。初診時に「親知らずの抜歯が当日可能か」を確認しておくと、忙しい方でも計画を立てやすくなります。
口腔外科は、痛みや不安が大きい分野ほど専門的な対応が求められます。気になる症状があれば、まずはお近くの歯科医院か口腔外科専門外来で相談してみてください。早めの受診が、治療の負担を大きく軽くしてくれます。