日本頭痛学会の資料によれば、片頭痛は成人人口の約8.4%が罹患し、女性では男性の約3倍にあたる12.9%に達します。とくに20〜40代の働く世代に多く、月経周期との関連も指摘されています。一方、緊張型頭痛は成人の約4〜5割が経験するといわれ、デスクワークやスマートフォンの使いすぎによる姿勢の悪化が主な引き金になります。
問題は、多くの人が「頭痛くらい我慢できる」「病院に行くほどではない」と放置してしまうことです。鎮痛薬を月に10日以上飲み続けると、薬がかえって頭痛を悪化させる「薬物乱用頭痛」のリスクがあります。また、くも膜下出血や脳腫瘍など命に関わる病気が隠れているケースもゼロではありません。「いつもと違う痛み」「突然の激しい痛み」「しびれや言葉の異常を伴う頭痛」は迷わず救急外来へ。それ以外の慢性的な頭痛こそ、専門外来で相談する価値があります。
あなたの頭痛はどちらのタイプ?見分け方の3つのポイント
頭痛の治療は、種類の見極めから始まります。片頭痛と緊張型頭痛は症状が大きく異なります。
- 痛み方:片頭痛はズキズキと脈打つような痛み。緊張型頭痛はギューッと締め付けられるような鈍い痛みです。
- 左右と持続時間:片頭痛は頭の片側に起こりやすく、4〜72時間続きます。緊張型頭痛は両側性で、数時間から数日にわたり持続します。
- 随伴症状:片頭痛では吐き気や光・音・においへの過敏が典型的。緊張型頭痛ではこれらの随伴症状がほとんどありません。
さらに、片頭痛の患者さんの一部には、痛みの直前に視覚異常などの「前兆」が現れることがあります。この見極めが重要なのは、治療薬が種類ごとに異なるためです。自己判断で鎮痛薬を漫然と使い続けるより、一度頭痛外来を受診して正確な診断を受けるほうが、結果的に早く楽になります。
治療の選択肢:内服からCGRP関連薬まで
日本の頭痛治療はここ数年で大きく変わりました。従来のトリプタン系薬剤に加え、2025年には片頭痛の急性期治療と発症抑制の両方を適応とする経口CGRP受容体拮抗薬「ナルティークOD錠75mg」が発売され、注射が苦手な人にも選択肢が広がっています。CGRP関連の注射薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグなど)は、月に数回の頭痛に悩む人が対象で、保険診療の3割負担で1本あたり1万円前後(初回は2本使用の場合あり)の自己負担が一般的です。効果の実感には個人差があり、3か月を目安に医師が判断します。
| 治療の種類 | 代表例 | 費用の目安(3割負担) | 向いている人 | メリット | 注意点 |
|---|
| 市販の鎮痛薬 | ナロンエースプレミアムなど | 12錠で700円前後 | 月1〜2回の軽い頭痛 | 薬局ですぐ買える | 月10日以上の使用は薬物乱用頭痛のリスク |
| トリプタン系処方薬 | スマトリプタンなど | 処方箋による | 片頭痛の発作時 | 発作に特化した効果 | 血管収縮作用のため一部の人には不向き |
| 経口CGRP拮抗薬 | ナルティークOD錠 | 保険診療 | 急性期治療と予防を両立したい人 | 血管収縮作用が少ない | 2025年発売の新しい薬剤 |
| CGRP関連注射薬 | エムガルティ、アジョビ | 1本約12,400〜13,500円 | 月5回以上、仕事や家事に支障がある人 | 発作回数の減少が期待できる | 注射部位の赤みや腫れが出ることがある |
| 薬の選択は、頭痛の頻度や生活への影響度で変わります。「まずは飲み薬で試したい」という人には経口薬が、「通院回数を減らしたい」という人には自己注射タイプが向くなど、ライフスタイルに合わせて選べるのが今の時代の特徴です。 | | | | | |
セルフケアでできること:頭痛ダイアリーとツボ押し
治療と並行して、自宅でできる対策も効果的です。日本頭痛学会が公開している「頭痛ダイアリー」は、痛みの程度を3段階で記録し、使用した薬の効果を○△でチェックする4週間分の記録シート。これを続けると、どんな場面で頭痛が起きやすいのか傾向が見えてきます。アプリ版も複数あるので、スマホで手軽に記録できます。
ツボ押しも手軽なセルフケアです。こめかみの痛みには、人差し指の腹で軽く円を描くように押すのが基本。入浴後など体が温まっているときに行うと効果的ですが、強く押しすぎないことが大切です。「痛気持ちいい」程度を目安に、1日数回、やりすぎないのがコツ。慢性的な頭痛には、鍼灸院での専門的な施術や、低周波治療器の活用も選択肢になります。
働く世代へ:職場でできる頭痛対策
頭痛に悩む人の多くが「休めない」という状況に置かれています。厚生労働省の資料でも、月経関連の不調が働く場面に与える影響が取り上げられ、休憩スペースの確保や生理休暇を取りやすい環境づくりが推奨されています。
職場で実践しやすい対策としては、1時間に一度は首を回して姿勢をリセットすること、モニターの高さを目の位置に合わせること、そして「頭痛が始まりそう」という予兆を感じたら早めに休憩を取ること。片頭痛の予兆には、あくび、肩こり、光がまぶしく感じるなどの変化があります。この段階で早めに対処できると、発作を軽く済ませられる可能性があります。
また、オンライン診療に対応した頭痛外来も増えています。通院が難しい人でも、スマートフォンで診察を受け、処方薬を自宅近くの薬局で受け取れる環境が整ってきました。横浜や藤沢など、駅近くに頭痛外来を併設する脳神経外科クリニックも増えています。近所のクリニックを探すときは「頭痛外来」や「脳神経外科」をキーワードに検索してみてください。
地域の専門外来を上手に活用する
頭痛の治療は、かかりつけ医に相談するところから始まります。そのうえで、頭痛外来を標榜する脳神経外科や神経内科のクリニックを受診すると、より専門的な診断と治療が受けられます。診察では、これまでの頭痛の記録をまとめて持参すると診断がスムーズです。頭痛ダイアリーを持っていけば、医師との会話も具体的になります。
受診のハードルを感じている人こそ、まずはオンライン診療から試してみるのも一案です。頭痛外来を設けているオンライン診療サービスもあり、仕事の合間に診察を受けられます。治療はすぐに結果が出るものではありませんが、正しい診断と継続的なケアで、頭痛と付き合う日々は確実に変わります。あなたの頭痛、今日から記録を始めてみませんか。