頭痛を抱えながらも受診をためらう背景には、いくつかの理由があります。
「頭痛くらいで病院に行くのは大げさ」という感覚が根強いこと。職場で「体調不良」と認識されにくく、欠勤や早退に罪悪感を感じる方も多いでしょう。また、どこに相談すればいいのか分からないという問題もあります。内科?脳神経内科?整骨院?頭痛の種類によって適切な診療科が異なるため、迷ってしまうのは当然です。
さらに深刻なのが、**市販薬の使いすぎによる「薬物乱用頭痛(MOH)」**です。鎮痛剤を月に10日以上飲み続けると、かえって頭痛が悪化し、薬が効きにくくなる悪循環に陥ります。「最近、痛み止めの効きが悪い」と感じている方は、要注意です。
頭痛は「種類」が違えば「治療」も違う
頭痛と一口に言っても、実は大きく分けて3つのタイプがあります。
| タイプ | 特徴 | 主な治療アプローチ |
|---|
| 片頭痛 | ズキンズキンと脈打つ痛み、吐き気、光・音に過敏、4〜72時間持続 | トリプタン系薬剤、CGRP関連製剤、予防薬 |
| 緊張型頭痛 | 頭全体が締め付けられるような鈍い痛み、肩こり・首こりを伴う | 鎮痛剤、筋弛緩、理学療法、鍼灸 |
| 群発頭痛 | 片側の目の奥がえぐられるような激痛、同じ時間帯に繰り返す | 酸素吸入、専門医による治療 |
| 特に片頭痛は、単なる「頭が痛い」ではなく、神経疾患です。三叉神経から放出されるCGRPというタンパク質が関与していることが解明され、これを標的にした新世代の治療薬が登場しています。片頭痛の患者さんは、女性が男性の約3倍。20〜40代の働き盛りに多いのが特徴です。月経周期や気圧の変化、寝不足、ストレスが引き金になることもあります。 | | |
片頭痛の診断——まずは「頭痛ダイアリー」から
「自分が片頭痛なのか分からない」という方は、まず頭痛ダイアリーをつけてみてください。頭痛の頻度、痛みの強さ、持続時間、伴う症状、きっかけ、服薬状況を1〜2週間記録するだけで、診断の精度が格段に上がります。日本頭痛学会のサイトから無料でダウンロードできるほか、スマートフォン用のアプリも充実しています。
医療機関では、問診と神経診察を中心に診断が行われます。「頭痛インパクトテスト(HIT-6)」という6つの質問で、頭痛が日常生活に与える支障度をスコア化する方法も一般的です。
受診の目安としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 月に2回以上、日常生活に支障をきたす頭痛がある
- 市販薬が効かない、または飲む量が増えてきた
- 痛み止めを月に10日以上飲んでいる
- 頭痛と一緒に吐き気や嘔吐がある
- 初めて経験する激烈な頭痛で不安がある
なお、**「突然始まった今までにない激痛」「手足の麻痺やろれつの回らない症状を伴う頭痛」「朝起きた時の吐き気を伴う頭痛」**は、くも膜下出血や脳腫瘍など危険な二次性頭痛のサインです。迷わず救急外来を受診してください。
片頭痛の治療——「痛くなってから」から「予防する」へ
片頭痛の治療は大きく2つに分かれます。
急性期治療は、発作が起きたときに痛みを抑える方法です。軽度〜中等度の頭痛にはアセトアミノフェンやNSAIDs(ロキソニンなど)が、中等度〜重度にはトリプタン系薬剤が用いられます。トリプタンは片頭痛のメカニズムに直接作用する薬で、市販薬では対応できない発作にも効果を発揮します。ただし、使いすぎると薬物乱用頭痛のリスクがあるため、月に10日を超えないよう注意が必要です。
予防治療は、発作そのものを起こりにくくする方法です。頭痛が月に2回以上ある、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合は、予防療法の検討が推奨されています。従来は抗てんかん薬や抗うつ薬、β遮断薬などが使われてきましたが、近年注目されているのがCGRP関連製剤です。
CGRP関連製剤——片頭痛治療の新時代
エムガルティ、アジョビ、アイモビーグなどの注射薬は、片頭痛の発作を予防する目的で月1回〜3ヶ月に1回皮下注射します。発作の頻度と重症度を大幅に減らす効果が報告されており、トリプタンが効きにくかった患者さんにも選択肢が広がりました。
さらに2025年12月には、ナルティークOD錠(一般名:リメゲパント)が日本で発売されました。これは急性期治療と予防治療の両方に使える日本初の経口CGRP拮抗薬です。従来は「痛いときに飲む薬」と「予防する薬」を別々に使う必要がありましたが、1つの薬で両方の役割を担える点が画期的です。経口薬なので注射が苦手な方でも使いやすく、専門医の処方が可能になっています。
治療薬の比較——自分に合う選択肢を知る
| カテゴリ | 代表的な薬 | 使用方法 | 適している人 | メリット | 注意点 |
|---|
| 鎮痛剤 | ロキソニン、アセトアミノフェン | 発作時に内服 | 軽度の頭痛 | 手軽で安価 | 使いすぎで薬物乱用頭痛のリスク |
| トリプタン | スマトリプタン、ナラトリプタン | 発作時に内服・点鼻 | 中等度〜重度の片頭痛 | 片頭痛に特化した効果 | 月10日以内の使用制限 |
| CGRP拮抗薬(経口) | ナルティークOD錠 | 発作時または予防的に内服 | 急性期と予防の両方に対応したい方 | 急性期・予防の両方に使用可 | 専門医による処方が必要 |
| CGRP関連注射薬 | エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ | 月1回〜3ヶ月に1回皮下注射 | 頻回な片頭痛、予防が必要な方 | 発作頻度を大幅に減らす | 高額、専門医の処方が必須 |
| 薬の費用は、健康保険の自己負担(3割)で考えれば、多くの方が経済的負担を抑えつつ治療を継続できる範囲にあります。気になる方は、受診時に処方費用の目安を医師に相談してみてください。 | | | | | |
頭痛外来を探す——地域別の受診ガイド
頭痛の専門診療を受けられる頭痛外来は、全国の主要都市に増えています。日本頭痛学会が認定する頭痛専門医は、学会のホームページから検索可能です。
- 東京:赤坂おかだ頭痛クリニック(赤坂見附駅から徒歩2分、20時まで診療、オンライン診療対応)
- 横浜:井土ヶ谷脳神経外科・内科(片頭痛のCGRP製剤治療に対応)
- 東京・墨田区:はら内科・脳神経クリニック(頭痛専門外来、CGRP関連製剤の投与に対応)
地方在住の方でも、オンライン診療に対応する頭痛外来が増えており、「近くに専門医がいない」という理由で諦める必要はなくなっています。かかりつけの内科や脳神経内科でも、専門医を紹介してもらうことが可能です。
日常生活でできる片頭痛対策
治療と並行して、生活習慣の見直しも重要です。
睡眠のリズムを整えることが第一です。寝不足はもちろん、休日に寝すぎることも片頭痛の誘因になります。毎日同じ時間に起きることを心がけましょう。
食事の記録も有効です。赤ワイン、チョコレート、チーズ、加工肉などは片頭痛を誘発しやすいと言われていますが、人によって異なります。頭痛ダイアリーに食事内容も記録すると、自分の誘因が見えてきます。
気圧の変化に敏感な方も多いです。天気の崩れる前日に頭痛が起こるタイプの方は、予報をチェックして前日から睡眠と水分補給を意識するだけで、発作を軽減できることがあります。
首と肩のケアも欠かせません。デスクワークで凝り固まった筋肉は、緊張型頭痛の直接の原因になります。1時間に一度は立ち上がってストレッチを。整体や鍼灸も選択肢の一つです。
我慢しない選択を——頭痛は「治せる」時代
「頭痛持ちだから」「体質だから」と諦めている方は、まだ多くいます。しかし、適切な診断と治療を受ければ、片頭痛の発作頻度を大幅に減らせることは、多くの臨床現場で確認されています。
職場や家庭でのパフォーマンスが上がれば、人生の質は確実に変わります。「頭痛くらいで」と遠慮せず、まずは頭痛ダイアリーを1週間つけてみてください。そして、その記録を持って頭痛外来や脳神経内科を受診しましょう。頭痛専門医の検索やオンライン診療の予約は、すべて自宅からできます。あなたのつらい日々は、変えられるのです。