頭痛には、脳や体に明確な病気がない「一次性頭痛」と、くも膜下出血や脳腫瘍など別の病気が原因で起こる「二次性頭痛」の二種類があります。一次性頭痛は生命に関わることは少ないものの、繰り返すことで仕事や家事、睡眠に大きな影響を及ぼします。
日本人に特に多いのは次の二つです。
- 片頭痛:片側または両側に脈打つような強い痛みが現れ、吐き気や光・音への敏感さを伴います。月に数回起こる人も少なくありません。予兆として、チカチカとした光が見える「閃輝暗点」を経験する人もいます。
- 緊張型頭痛:頭全体が締め付けられるような鈍い痛みが特徴で、デスクワークやスマートフォンの長時間使用、肩こりと深く関係します。日本のオフィスワーカーに特に多く見られます。
この二つは症状が重なることもあり、自己判断が難しいのが現実です。診断を誤ると適切な治療にたどり着けないため、繰り返す頭痛がある場合は専門医の診断を受けることが第一歩になります。
危険な頭痛を見逃さないために
頭痛の中には、命に関わる二次性頭痛が潜んでいることもあります。次のような症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。
- 突然これまでに経験したことのない激しい頭痛
- 発熱や意識障害、けいれんを伴う頭痛
- 手足のしびれや言葉のつまりを伴う頭痛
- 進行性に悪化する頭痛
- 就寝中に痛みで目が覚めるような頭痛
こうした症状はくも膜下出血や脳腫瘍、髄膜炎などの可能性があります。国立病院機構大阪医療センターの頭痛センターでは、脳神経内科・脳神経外科に加え、眼科、口腔外科、耳鼻科、整形外科と連携し、こうした二次性頭痛を迅速に診断する体制を整えています。地域の総合病院にも同様の連携体制が整いつつあります。
頭痛外来と専門医の活用
日本頭痛学会は2005年から頭痛専門医の認定制度を開始し、全国の専門医は学会のホームページで検索できます。近年は「頭痛外来」を設けるクリニックも増えており、地域の脳神経外科や神経内科クリニックで受診できます。
頭痛外来では、問診に加えて頭痛ダイアリーの活用が推奨されています。頭痛の頻度、痛みの強さ、持続時間、誘因を記録することで、診断の精度が上がり、治療効果の評価もしやすくなります。受診前に2週間ほど記録を付けておくと、医師とのコミュニケーションがスムーズになるでしょう。
| 受診先の種類 | 特徴 | 想定される費用 | こんな人におすすめ | メリット | 注意点 |
|---|
| 頭痛外来(専門クリニック) | 頭痛に特化した診療 | 保険診療内で一般的な外来診療と同程度 | 繰り返す頭痛があり専門的な診断を受けたい人 | 専門医による精密な診断、最新治療の選択肢 | 地域によっては予約が取りにくい |
| 脳神経外科・神経内科クリニック | 脳疾患の精査と頭痛診療を併設 | 保険診療内で一般的な外来診療と同程度 | 危険な頭痛を除外したい人、脳の検査も受けたい人 | MRIなどの画像検査が受けられる | 専門外来の曜日が限られる場合がある |
| 総合病院の頭痛センター | 二次性頭痛への包括的対応 | 保険診療内(紹介状の有無で変わる) | 原因不明の頭痛、他の疾患が疑われる人 | 複数診療科との連携で原因究明が可能 | 紹介状がないと初診料が高くなることがある |
| 費用はすべて保険診療の範囲で、加入している公的医療保険によって自己負担割合が異なります。気になる場合はお住まいの地域の医療機関に問い合わせてみてください。 | | | | | |
治療薬の選択肢が大きく広がっている
片頭痛の治療薬は近年、目覚ましい進歩を遂げています。従来はアセトアミノフェンやロキソプロフェンなどの一般的な鎮痛薬が使われ、効果が不十分な場合にトリプタン系薬剤が用いられてきました。ただしトリプタンには血管を収縮させる作用があるため、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある人には使えませんでした。
その状況を変えたのが、CGRPというタンパク質に着目した新しい治療薬です。2021年以降、エムガルティ、アジョビ、アイモビーグといった抗CGRP関連抗体薬が登場し、月に1回または3か月に1回の注射で片頭痛を予防できるようになりました。さらに経口のCGRP受容体拮抗薬(ゲパント系)も登場し、血管収縮作用がないため心血管リスクのある患者にも使いやすくなっています。2025年9月に承認されたナルティーク(リメゲパント)は、急性期治療と予防の両方に使える「二刀流」の薬として注目されています。
これらの新薬はすべて保険診療の対象で、頭痛専門医が患者の症状や既往歴に応じて使い分けます。「市販薬が効かない」と諦めている人ほど、専門医の診察を受ける価値があると言えるでしょう。
日常生活でできる頭痛対策
薬だけに頼らず、生活習慣の見直しも頭痛改善には欠かせません。片頭痛は天気の変化、睡眠不足、ストレス、空腹、特定の食品などが誘因になります。自分の誘因を知るには、やはり頭痛ダイアリーが役立ちます。
緊張型頭痛には、姿勢の改善と肩こりのケアが効果的です。デスクワークの合間に首や肩をほぐすストレッチを取り入れ、スマートフォンを長時間見る際は目線の高さを意識しましょう。適度な運動と規則正しい睡眠も、両タイプの頭痛予防に有効とされています。
市販薬を使う際の注意点もあります。痛み止めを月に10日以上、3か月以上続けて使用すると「薬物乱用頭痛」を引き起こすリスクがあります。頭痛薬の使用頻度が増えていると感じたら、自己判断を続けずに医療機関へ相談してください。
地域のリソースを活用しよう
全国の脳神経外科・神経内科クリニックで頭痛外来が開設されており、例えば岐阜市のなかしま脳神経外科クリニックのように、頭痛外来を専門外来として設けるクリニックが各地に増えています。また、日本頭痛学会のホームページでは、頭痛専門医を地域別に検索できます。
かかりつけ医から頭痛専門の医療機関を紹介してもらうのも有効な方法です。紹介状があれば、総合病院の頭痛センターでもスムーズに受診できます。頭痛は命に関わらないからと我慢を続けるのではなく、専門家の力を借りて、自分の頭痛と上手に付き合う方法を見つけてください。適切な診断と治療によって、頭痛に振り回されない毎日は十分に手の届くところにあります。