日本の頭痛は「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に大別されます。二次性頭痛は脳腫瘍や脳出血など別の病気が原因で起こるもので、早急な医療機関での診断が必要です。一方、頭痛そのものが疾患である一次性頭痛は、片頭痛と緊張型頭痛で全体の約99%を占めています。
近年の傾向として、スマートフォンやパソコンの長時間使用による首の筋肉の負担が増えた影響で、緊張型頭痛の割合が増加しています。かつては緊張型66%、片頭痛33%とされていましたが、現在では緊張型頭痛が約85%、片頭痛が約14%という状況です。残りの1%には群発性頭痛などが含まれます。
緊張型頭痛と片頭痛の症状の違い
緊張型頭痛は、後頭部を中心に頭全体が締め付けられるような鈍い痛みが特徴です。肩こりや首こりを伴いやすく、吐き気や光・音への過敏はあまり見られません。痛みは軽度から中等度で、数十分から数日続くことがあります。仕事や人間関係のストレス、長時間のデスクワーク、姿勢不良、睡眠不足などが引き金になります。
片頭痛は、脈打つようなズキズキとした痛みが片側に現れることが多く、吐き気や嘔吐、光や音への敏感さを伴います。気圧の変化、寝不足、ストレス、生理前後のホルモンバランスの変化で悪化しやすいのも特徴です。特に日本の春先から梅雨にかけては気圧が乱高下しやすく、片頭痛を持つ方にとっては辛い季節です。
これらの見分け方を知っておくと、自分に合った対処法を選びやすくなります。
市販薬との上手な付き合い方
軽度の頭痛であれば市販薬で対応できることもあります。イブプロフェンやロキソプロフェンなどの鎮痛薬が一般的ですが、注意したいのは「痛み止めの使い過ぎ」です。月に10日以上鎮痛薬を使っていると、かえって頭痛を悪化させる「薬物乱用頭痛」のリスクがあります。
市販薬を飲んでも効かない、効く量が増えてきた、頭痛で予定を崩すことが月に2回以上ある、といった場合は、一度専門医療機関を受診するのが賢明です。自己判断で市販薬を続けるより、適切な診断と治療を受けた方が長い目で見て楽になります。
専門医に相談する目安と治療の選択肢
日本頭痛学会が認定する頭痛専門医や、脳神経内科・脳神経外科の外来では、頭痛ダイアリーをつけながら診断を進めていきます。受診の目安としては、次のようなケースが挙げられます。
- 初めて経験する強い頭痛で不安がある
- 朝起きた時から痛む、または首こり・肩こりとセットでつらい
- 市販薬が効かない、効く量が増えてきた
- 生理前後に悪化する
- 仕事の集中力が落ち、生産性が下がっている
片頭痛の治療は大きく分けて、痛みが出たときに使う急性期治療と、発作を予防する予防治療があります。従来は別々の薬を使う必要がありましたが、2025年12月には日本で初めて急性期と予防の両方に使える経口薬が登場しました。また、抗CGRP関連抗体薬などの新しい予防薬も2021年以降に相次いで保険診療で使えるようになっています。2026年には新たな予防薬も承認され、治療の選択肢は広がっています。
| 治療カテゴリー | 主な方法 | 特徴 | こんな人に向いている | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 急性期治療 | トリプタン系薬剤、新世代経口薬 | 痛みが出た時に服用し、発作を速やかに抑える | 月に数回程度の発作がある人 | 使い過ぎによる薬物乱用頭痛に注意 |
| 予防治療 | 内服薬、抗CGRP抗体薬、新世代経口薬 | 発作そのものを減らす目的で継続して使用 | 月に2回以上発作がある人 | 効果が出るまで数週間から数ヶ月かかる |
| 非薬物療法 | 鍼灸、整体、マッサージ、ヘッドスパ | 筋肉の緊張を和らげ、血流を改善する | 緊張型頭痛や肩こりを伴う人 | 施術院により技術や費用にばらつきがある |
伝統的な対処法を取り入れる
日本の伝統的なアプローチも頭痛対策に役立ちます。鍼灸は首や肩の筋肉の緊張を緩和し、血行を改善することで緊張型頭痛に効果が期待できます。整体やマッサージも同様に、デスクワークで固まった筋肉をほぐすのに適しています。東京都内の鍼灸院では、頭痛や眼精疲労に特化したコースを用意しているところも多く、60分あたり数千円程度から利用できるケースがあります。
温めることも効果的です。ホットタオルや入浴で首や肩を温めると、筋肉の緊張が和らぎます。逆に、片頭痛の場合は冷やす方が良いこともあります。発作時に痛む場所を冷やすと、血管の拡張によるズキズキ感が軽減されることがあります。自分の頭痛タイプに合わせて、温めるか冷やすかを選びましょう。
日常生活でできる予防策
頭痛を予防するには、規則正しい生活習慣が基本です。具体的には次のようなポイントを意識してみてください。
睡眠を一定に保つ:休日に寝だめをするよりも、毎日同じ時間に起きる方が頭痛予防には効果的です。寝不足も寝すぎも頭痛の引き金になります。
姿勢を整える:パソコン作業時はモニターの高さを目線に合わせ、背筋を伸ばしましょう。長時間同じ姿勢が続く場合は、1時間に一度は首や肩を回すなどして筋肉の緊張をほぐします。
目の疲れに気をつける:スマホやパソコンの使いすぎは眼精疲労を招き、頭痛につながります。定期的に遠くを見る時間をつくるだけでも違います。
気圧の変化に備える:日本では低気圧が近づくと頭痛が悪化する人が多くいます。天気予報で気圧の変化がわかるアプリを活用し、悪そうな日は無理をしないという判断も大切です。
頭痛ダイアリーをつける:いつ、どんな状況で頭痛が起きたかを記録すると、自分の引き金が見えてきます。診察時にも役立つので、スマホのアプリや手帳で簡単につけてみましょう。
地域の専門外来を探す
頭痛でお悩みなら、まずは地域の脳神経内科や頭痛外来を探してみてください。日本頭痛学会のウェブサイトでは認定専門医の一覧を確認できます。近年は「頭痛外来」を掲げるクリニックも都市部を中心に増えており、仕事帰りに通えるよう夜間診療を行うところもあります。
受診の際は、頭痛の頻度、痛みの場所や種類、市販薬の使用状況、生活習慣などをメモして持っていくと、スムーズに診察が進みます。「我慢できる程度だから」と放置せず、早めに相談することで、頭痛のない日々を取り戻せるかもしれません。頭痛は適切な治療でコントロールできるものです。一人で抱え込まず、専門家の助けを借りましょう。