口腔外科は、口の中・顎・顔面に生じる疾患を外科的に診断・治療する診療科です。日本では歯科医師免許を持ち、さらに日本口腔外科学会が認定する専門医や、大学病院・地域の中核病院が研修施設として診療にあたっています。
一般歯科が虫歯や歯周病の治療を主とするのに対し、口腔外科は以下のようなケースを対象にします。
- 骨の中に埋まった親知らず(埋伏智歯)の抜歯
- 顎関節症による口の開きにくさや痛み
- 糖尿病や心臓疾患などの基礎疾患を持つ方の抜歯
- 顎の骨や粘膜にできる嚢胞や腫瘍の診断・治療
- 顎の変形や顔面の外傷への対応
大阪歯科大学附属病院や大阪みなと中央病院などの医療機関では、入院を伴う悪性腫瘍の治療や顎変形症の手術まで手がけています。一方、一般の歯科医院で対応が難しいと判断された場合は、大学病院や専門の口腔外科クリニックへの紹介状を書いてもらう流れが一般的です。
よくある悩みと、実際の受診ケース
1. 親知らずの抜歯をためらっている
20代から30代の患者さんに最も多い相談が、親知らずの抜歯です。完全に骨の中に横向きで埋まっている「水平埋伏智歯」は、抜歯の難易度が高く、一般歯科ではなく口腔外科の専門医が担当することが多いケースです。
東京で働く30代の会社員、田中さん(仮名)の例を紹介します。毎年のように親知らず周辺が腫れ、痛み止めでやり過ごしていましたが、歯科用CTを撮影したところ、下顎の神経に近い位置に横向きで埋まっていることが判明しました。大学病院の口腔外科を紹介され、2泊3日の入院で全身麻酔による抜歯を行いました。術後は1週間ほど腫れましたが、再発の悩みから解放されたと話していました。
なお、親知らずの抜歯は、痛みや腫れ、むし歯など症状がある場合は保険診療の対象になります。一方、矯正治療を目的とした抜歯は自由診療となるため、事前に費用の確認が必要です。
2. 顎の痛みや口の開きにくさを放置している
仕事やストレスが原因で顎関節症を発症する方も少なくありません。あごの音が鳴る、口が大きく開かない、食事中に痛むといった症状があるなら、早めの受診がおすすめです。口腔外科では、スプリントと呼ばれるマウスピースでの治療や、生活指導を組み合わせて症状を改善していきます。
3. 基礎疾患があるため抜歯を不安に思っている
骨粗鬆症や関節リウマチの治療薬を服用中の方は、抜歯後の治癒に影響が出ることがあります。口腔外科ではこうした全身状態を踏まえた治療計画を立てるため、かかりつけ医との連携もスムーズです。「持病があるから抜歯は無理」と諦める前に、専門医へ相談してみると良いでしょう。
費用の目安と治療の流れ
日本の医療保険制度では、症状がある場合の親知らず抜歯は保険診療で受けられます。3割負担の場合の目安は、以下のとおりです。
| 治療内容 | 保険診療(3割負担)の目安 | 対象となる主なケース |
|---|
| まっすぐ生えている親知らずの抜歯 | 約1,000~2,000円程度 | 症状があり保険適応となる場合 |
| 斜めに生えた親知らずの抜歯 | 約2,000円前後 | 隣の歯への影響や痛みがある場合 |
| 横向きに埋まった親知らずの抜歯 | 約3,000~5,000円程度 | 完全埋伏智歯など難易度の高いケース |
| 歯科用CT撮影 | 約3,000円前後 | 神経との位置関係を確認する場合 |
| 初診料(検査・レントゲン含む) | 約3,000円 | 初めて受診する場合 |
| なお、費用は医療機関や親知らずの状態によって異なり、難症例では複数回の通院が必要になることもあります。自由診療となるケース(矯正目的の抜歯など)は金額の幅が広いため、見積もりを取ってから進めるのが安心です。 | | |
| 治療の流れは、初診での検査・診断、治療計画の説明、抜歯・手術、術後の経過確認という順番が一般的です。口腔外科の専門医が常勤するクリニックでは、初診当日に抜歯を実施できるケースもあります。 | | |
専門医を選ぶときの3つのポイント
口腔外科の受診先を選ぶ際は、次の点を確認してみてください。
- 日本口腔外科学会の専門医・指導医が在籍しているか
- 歯科用CTなど3次元での検査設備が院内にあるか
- 基礎疾患への対応や、入院が必要な手術の受け入れ体制があるか
地域の大学病院や歯科大学附属病院、日本口腔外科学会認定研修施設は、難症例への対応実績が豊富です。一方、専門の口腔外科クリニックでは、予約制でスムーズに診察を受けられる利点があります。症状が軽度なうちはかかりつけの歯科医院、難症例や入院が必要な場合は大学病院・専門クリニックという使い分けが現実的です。
気になる症状があれば、早めに一度相談してみてください。口腔外科は決して特別な診療科ではなく、口の健康を守る頼れるパートナーです。