頭痛は大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分けられます。一次性頭痛は脳に器質的な異常がなく、原因が機能的なもので、緊張型頭痛・片頭痛・群発頭痛などが該当します。二次性頭痛は脳腫瘍やくも膜下出血など、別の病気が原因で起こる頭痛です。
日本における有病率のデータでは、緊張型頭痛が約15.6%、片頭痛が約8.4%と報告されています。つまり、頭痛に悩む人の多くは緊張型か片頭痛のどちらかで、この2つは症状や対処法が異なります。
緊張型頭痛は、頭の両側がベルトで締め付けられるような鈍い痛みが特徴です。痛みは軽度から中等度で、吐き気は伴いません。デスクワークでの長時間の同じ姿勢、ストレートネック、目の酷使、精神的ストレスが主な誘因とされ、パソコン作業が多いビジネスパーソンに特に多く見られます。
片頭痛は、頭の片側がズキズキと脈打つように痛み、光や音に敏感になったり、吐き気を伴ったりするのが特徴です。痛みの前に関節がピカピカ光って見える「閃輝暗点」と呼ばれる前兆が出る人もいます。気圧の変化、睡眠不足、生理周期、特定の食べ物などがきっかけになることが知られています。
この2つの見分け方が分かると、市販薬の選び方や受診のタイミングが明確になります。
市販薬の選び方と正しい使い方
日本では頭痛薬をドラッグストアで手軽に購入できますが、成分の違いを知らずに選んでいる人も少なくありません。代表的な市販の頭痛薬は、以下のように分けられます。
| 種類 | 代表的な成分 | おすすめの症状 | 特徴 | 注意点 |
|---|
| ロキソニンS | ロキソプロフェン | 片頭痛・強い痛み | 痛みのピークへの到達が速い | 胃腸への負担があるため空腹時は避ける |
| イブ系 | イブプロフェン | 緊張型・片頭痛の両方 | 種類が豊富で眠気成分入りもある | 胃が弱い人は要注意 |
| タイレノール系 | アセトアミノフェン | 胃が弱い人・妊娠中でない人 | 胃腸への負担が比較的少ない | 鎮痛効果は他のNSAIDsより穏やか |
| 市販薬の服用で大切なのは「痛みが強くなる前に飲む」ことです。痛みを我慢し続けてから飲むと、体内で炎症を起こす物質が増え、薬が効きにくくなることがあります。また、コップ1杯以上の水で服用し、カフェインの過剰摂取には注意しましょう。 | | | | |
| ただし、市販薬を毎月10日以上、3か月以上続けて飲んでいる場合は、薬物乱用頭痛のリスクがあります。「薬を飲まないと頭痛が出る」「以前より効きにくい」と感じたら、自己判断をやめて頭痛外来や神経内科を受診してください。 | | | | |
医療機関の選び方と受診の目安
頭痛外来は、日本では脳神経内科や脳神経外科に設置されていることが多く、日本頭痛学会の専門医が診療にあたるクリニックが全国各地にあります。初診でMRI検査まで行った場合の自己負担は、保険診療で1〜3割負担、おおむね2,000円〜7,000円程度が目安です。これは全国一律の診療報酬に基づくため、病院によって大きく金額が変わることはありません。
受診を考えるタイミングの目安は、以下の通りです。
- 頭痛が月に2回以上あり、市販薬では痛みをコントロールできない
- 頭痛の頻度や強さが数か月で徐々に増えている
- 片頭痛の予防薬やCGRP関連薬の処方を検討したい
近年、片頭痛の治療は大きく進歩しています。従来のトリプタン系薬に加え、2025年には経口のCGRP受容体拮抗薬「ナルティークOD錠」が国内で発売され、発作時の治療と予防の両方に使える飲み薬として注目されています。血管を収縮させる作用がないため、心臓や血管への負担が少ないのが特徴です。ただし、こうした新しい薬の処方には頭痛診療の専門医による診察が必要で、腎臓や肝臓の状態、妊娠の有無などの確認も行われます。
一方、緊張型頭痛が中心であれば、薬だけに頼らず、理学療法や鍼灸、整体などの非薬物療法を組み合わせる選択肢もあります。鍼灸治療は保険適用外の自由診療が多く、費用は施術内容により異なりますが、頭痛のタイプに合わせてツボを使い分ける専門家も増えています。福岡市など都市部では、国家資格を持つ鍼灸師が頭痛の見立てを行い、首肩の深部筋への手技や姿勢評価までセットで対応する施術院もあります。
危険な頭痛を見逃さないためのチェックリスト
どのタイプの頭痛であっても、以下の症状がある場合はセルフケアや市販薬での対応をやめ、ただちに医療機関を受診してください。
- 突然、バットで殴られたような激しい頭痛が起きた
- 発熱と首のこわばりを伴う頭痛がある
- ろれつが回らない、手足のしびれ、顔のゆがみを伴う
- 50歳を過ぎてから初めて強い頭痛が起きた
- 視野が欠ける、物が二重に見える
こうした症状は、くも膜下出血、髄膜炎、脳卒中など緊急性の高い脳疾患の可能性があります。特に「今までで最悪」と感じる頭痛は、迷わず救急要請の対象です。
日常生活でできる頭痛予防とセルフケア
頭痛の頻度を減らすには、生活習慣の見直しが効果的です。特に日本の働く環境に合わせた対策を挙げます。
1. デスクワーク時の姿勢を整える
モニターの高さを目の位置に合わせ、首が前に出ないようにしましょう。1時間ごとに立ち上がって首や肩を動かすだけでも、緊張型頭痛の予防になります。
2. 頭痛ダイアリーを習慣にする
頭痛が起きた日時、痛みの強さ、天気、睡眠時間、食事を記録すると、自分特有の誘因が見えてきます。無料の頭痛記録アプリもあり、カレンダー表示やデータの書き出しができるものもあります。受診の際に医師へ見せることで、診断の精度が上がります。
3. 水分と睡眠を意識する
水分不足は頭痛の誘因の一つです。オフィスではデスクに水を置き、こまめに飲む習慣をつけましょう。睡眠時間は個人差がありますが、毎日同じ時間に寝起きするリズムを整えることが片頭痛の予防に有効とされています。
4. ツボ押しをセルフケアに取り入れる
緊張型頭痛には、頭頂の百会、後頭部の風池などが代表的なツボとされています。ただし、ツボ押しはあくまで補助的なケアであり、2週間以上続く頭痛や頻度が増えている場合は医療機関の受診を優先してください。
頭痛は我慢するものではなく、適切に向き合えば改善できる症状です。自分の頭痛のタイプを知り、市販薬・専門医・生活習慣のそれぞれを組み合わせて、日常生活の質を取り戻しましょう。まずは頭痛ダイアリーを1週間つけてみることから始めてみてください。