日本の成人の約8.4%が片頭痛を持つとされる。特に女性は男性の約3倍にあたる12.9%に上り、20〜40代の働く世代に集中している。それなのに医療機関への受診率は低いままだ。「体質だから仕方ない」「忙しくて行けない」と何年も我慢しているケースが少なくない。
その結果として増えているのが、市販の痛み止めを使いすぎることで起きる薬物乱用頭痛だ。急性期の薬を3ヶ月以上にわたって連日のように使うと、かえって頭痛の頻度が上がる。月に10日以上も頭痛があるなら、自己流の対処では限界と言っていい。
頭痛には大きく分けて、命に関わらない一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛)と、脳出血や脳腫瘍などが原因の二次性頭痛がある。突然の激しい痛み、これまでで最強の痛み、発熱や麻痺を伴う場合などはすぐに医療機関へ。その見極めを最初にやってくれるのが頭痛外来だ。
頭痛外来で受けられる診療と費用
日本頭痛学会が認定する頭痛専門医や脳神経内科医が診る頭痛外来は、一般内科より詳しい問診と神経学的診察を重視する。初診の目安は3割負担で3,000円前後、CT検査が約4,000円、MRI検査が約7,000円。いずれも保険診療なので、高額療養費制度の対象になる場合もある。
診察の中心になるのが問診だ。いつから、どのくらいの頻度で、どんな痛みか。吐き気や光・音への過敏があるか。この情報を正確に伝えるために役立つのが頭痛ダイアリーである。頭痛が起きた日時、強さ、持続時間、その日の睡眠や食事、天候を記録しておくと、診断の精度が格段に上がる。
| 診療内容 | 費用の目安(3割負担) | こんな人に向く | ポイント |
|---|
| 頭痛外来・初診 | 3,000円前後 | 頻繁な頭痛で生活に支障がある人 | 専門医による詳しい問診と診察 |
| CT検査 | 約4,000円 | 急な激しい頭痛や危険なサインがある人 | 二次性頭痛の除外に有効 |
| MRI検査 | 約7,000円 | 慢性の頭痛で精密な画像診断が必要な人 | より詳細な脳の状態を確認できる |
| オンライン再診 | クリニックによる | 通院が難しい人 | 再診はオンライン対応の施設が多い |
片頭痛の治療はこの数年で大きく変わった
片頭痛の治療は、痛みを取る急性期治療と、発作そのものを減らす予防療法に分かれる。軽い発作なら消炎鎮痛薬で対応し、強い発作には片頭痛特異的治療薬のトリプタンが推奨される。トリプタンは発症から1時間以内に飲むのが効果のカギで、遅れると皮膚が敏感になるアロディニアのせいで効きが悪くなる。
この数年で選択肢が増えたのも大きな変化だ。トリプタンが効きにくい人や心血管リスクがある人向けに、血管を収縮させないジタンや、CGRPという痛みの伝達物質の働きを抑える経口薬ゲパントが登場した。さらに、月1回の注射で発作を予防する抗CGRP抗体製剤も普及している。発作が月2回以上、生活に支障が出る頭痛が月3日以上ある人は、片頭痛の予防薬の対象となる。
例えば30代の女性会社員が、月経のたびに強い頭痛に悩まされ、市販薬を週に数回飲んでいたケースを考えてみよう。頭痛外来で月経時片頭痛と診断され、トリプタンを発作の早い段階で飲むよう指導を受けてから、発作の回数は半分以下に減ったという。こうした例は珍しくない。処方薬の費用は保険が適用され、ジェネリック医薬品も選べるため、通院を続けやすい環境が整ってきた。
| 治療の種類 | 代表的な薬剤 | 特徴 | 向いている人 |
|---|
| 急性期・鎮痛薬 | 消炎鎮痛薬、アセトアミノフェン | 市販薬でも入手しやすい | 軽度から中等度の発作 |
| 急性期・トリプタン | スマトリプタンなど5ブランド | 片頭痛特有の痛みに高い効果 | 中等度以上の発作がある人 |
| 急性期・ジタン/ゲパント | レイボー、ナルティーク | 血管収縮作用がない | 心血管リスクがある人 |
| 予防・抗CGRP抗体 | エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ | 月1回または3ヶ月に1回の注射 | 頻回の発作に悩む慢性片頭痛の人 |
緊張型頭痛のセルフケアと今日から始めたい習慣
片頭痛ほど激しくないが、肩こりと一緒にやってくる締め付けられるような痛み、それが緊張型頭痛だ。デスクワーク中心の生活やストレス、姿勢の悪さが主な引き金になる。40代の男性が、長時間のパソコン作業の後に首から肩にかけてのこりと頭痛に襲われる、というのも典型的なパターンだ。
まず見直したいのは姿勢。パソコン作業が続いたら1時間に一度は首や肩を回し、スマートフォンを見る時のうつむき姿勢を避ける。湯船にゆっくり浸かって肩周りを温めるのも効果的だ。鍼灸やマッサージを習慣にしている人も多い。症状が強い場合、医師が筋弛緩薬を補助的に処方することもあるが、あくまで非薬物療法が基本とされる。
気圧の変化に反応して頭痛が悪化する人もいる。日本の梅雨時や台風シーズンは特に注意したい。天気痛として知られるこのタイプは、頭痛外来で相談できる。
頭痛を減らすために今日からできることは、頭痛ダイアリーを始めることだ。ノートでもスマートフォンのアプリでも構わない。記録するのは次の4つ。
- 頭痛が起きた日時と長さ
- 痛みの強さ(10段階)と場所
- その日の睡眠時間、食事、飲酒、ストレス
- 気圧や天気、生理周期(女性の場合)
これを2〜3週間続けて持っていけば、医師との会話がスムーズになる。「週に2回以上」「市販薬が効かなくなった」「仕事や家事に支障が出る」という状態なら、早めに頭痛外来を予約しよう。日本頭痛学会のホームページでは頭痛専門医を検索できるほか、多くのクリニックがオンライン予約に対応している。
頭痛は我慢して乗り越えるものではなく、治療して改善するものだ。適切な診断と治療で、頭痛に振り回されない生活は十分に手に入る。まずはお近くの頭痛外来か、かかりつけ医に相談してみてはいかがだろうか。