口腔外科は、歯や歯茎だけでなく、顎の骨、唾液腺、口の粘膜、神経など口の周りの組織を幅広く対象とする診療科です。一般歯科が虫歯や歯周病の治療を中心に担うのに対し、口腔外科は外科的な処置が必要なケースを専門に扱います。
日本では多くの歯科大学や大学病院に口腔外科の部門が置かれ、難しい症例は一般歯科から紹介されることも少なくありません。近年は口腔外科を標榜するクリニックも増え、地域の歯科医院で完結できる治療の範囲も広がってきました。
こんな症状は口腔外科が担当
一般歯科と口腔外科の境界は、意外とあいまいです。次のような症状に心当たりがあれば、口腔外科への相談を検討してみてください。
- 埋まった親知らずや横向きの親知らずの抜歯
- 顎関節症による口の開きにくさや痛み
- 顎の骨や口の粘膜にできた嚢胞や腫瘍
- 顎変形症に伴う噛み合わせの問題
- 治りにくい口内炎や口腔粘膜の病気
- 骨粗鬆症や関節リウマチの治療薬服用中の抜歯
特に、骨粗鬆症の薬を服用している人が抜歯をすると、顎の骨の治りが悪くなることがあります。こうしたケースでは、薬の種類や休薬の判断も含めて、口腔外科の専門的な管理が欠かせません。
代表的な治療と費用の目安
口腔外科の治療の多くは健康保険が適用されるのが日本の大きな特徴です。一方で、インプラント治療など自由診療となるものもあります。治療を検討する際の参考に、代表的な治療をまとめました。
| 治療内容 | 保険適用 | 費用の目安 | 治療期間の目安 | 主なメリット | 注意点 |
|---|
| 親知らずの抜歯 | 適用 | 初診料を含め自己負担は数千円程度 | 1日〜数回 | 痛みや腫れに配慮した対応が可能 | 難しい症例は大学病院へ紹介される場合も |
| 顎関節症のマウスピース療法 | 適用 | 自己負担は手頃な範囲 | 数か月〜 | 通院だけで対応できる | 装着期間中の定期的な通院が必要 |
| 顎骨嚢胞の摘出 | 適用 | 入院が必要な場合もある | 数週間〜 | 進行を防げる | 大学病院で対応する場合が多い |
| 顎変形症の外科的矯正 | 適用となる場合あり | 入院を伴う | 1〜3年 | 骨格から改善できる | 術前矯正に時間がかかる |
| インプラント治療 | 自由診療 | 1本あたり数十万円(都内の実例では46万円前後のケースも) | 数か月〜1年 | 見た目と噛み心地の再現性が高い | 定期的なメンテナンスが重要 |
| 具体的な金額は症状や医院によって異なるため、初診時に見積もりを確認すると安心です。保険診療の初診料は、健康保険3割負担であれば3,000円から5,000円程度が目安です。 | | | | | |
親知らずの抜歯は保険診療で受けられる
親知らず、特に下の親知らずは横向きに埋まっていたり、神経の近くに位置していたりすることが多く、処置の難易度が高いことで知られています。日本では、こうした難しい抜歯を口腔外科で行い、健康保険を適用するのが一般的です。3割負担の自己負担額は、初診料を含めても手頃な範囲に収まることが大半です。
顎関節症はまず保存的治療から
顎関節症は、口を開けると音がする、顎が痛む、口が開きにくいといった症状が特徴です。治療は最初から手術を行うのではなく、マウスピースによるアプライアンス療法や食事指導、開口訓練などの保存的治療から始めるのが基本です。多くの場合、こうした治療で症状は落ち着きます。
専門医の選び方と受診の流れ
口腔外科への受診を考えるとき、まずは住んでいる地域のクリニックで相談してみるのが第一歩です。「口腔外科 近く」という検索で探せますが、次の点に注目すると良いでしょう。
- 日本口腔外科学会の専門医・認定医が在籍しているか
- 歯科用CTなど検査設備が整っているか
- 大学病院との連携があるか
- 全身疾患を持つ方への対応経験があるか
40代の女性、美咲さんの例を紹介します。彼女は下の親知らずが横向きに埋まっていると指摘され、一般歯科から口腔外科専門のクリニックを紹介されました。初診でCTを撮影し、神経との位置関係を確認した上で抜歯が安全に進められました。術後の腫れは数日で落ち着き、今は定期検診に通いながら経過を見ています。
難しい症例や、心臓病や糖尿病などの持病を抱えている場合は、地域の大学病院の口腔外科を利用する選択肢もあります。紹介状があれば診療がスムーズに進むことが多いため、かかりつけの歯科医院に相談してから訪れるのがおすすめです。
受診前に準備しておくこと
口腔外科の受診はハードルが高く感じるかもしれませんが、多くの治療は保険診療で受けられ、事前に予約をすれば待ち時間も短く済みます。受診前に、服用中の薬や持病、気になる症状がいつから始まったかをまとめておきましょう。これだけで診察は格段にスムーズになります。
抜歯後は、当日の入浴や激しい運動を控え、処方された薬は指示通りに服用します。止血のためのガーゼを噛み続ける時間や、うがいのタイミングも医師の指示に従いましょう。腫れが気になる場合は冷やすことで症状が和らぐこともあります。
口の中の違和感を放置すると、痛みや炎症が悪化するだけでなく、全身の健康にも影響を及ぼすことがあります。気になる症状があれば、早めに地域の口腔外科へ足を運んでみてください。かかりつけの歯科医院に聞けば、適切な専門医を紹介してもらえます。